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抄録のご紹介ページ(一般演題)

一般演題1・抄録/発達障害診療・心理相談


【1-1】発達障害診療に有用であった学習と遊びの活動(こども無料塾)
藤井 厚一郎1、佐藤 結衣子1、足立 元1
1. 耳原総合病院

 発達障害の診療では、不登校や反抗的言動といった二次障害が主訴となることが多く、対応が求められ る。児への不適切な関わりや適切な支援の不足が二次障害の原因とされているが、それらへの介入を地域の医 療機関で小児科医が行う例は非常に少ない。私たちは2022年から、発達障害で通院中の児を対象に、小児科 医と一緒に学習や遊びを行う「こども無料塾」という活動を行ってきた。必要に応じて、小児科医と児が1対 1で行う場合と初期研修医や学生ボランティアの協力を得て集団で行う場合がある。この活動に参加した児に ついて、診療録とアンケートを用いてデータを収集した。データをもとに、二次障害という観点から児と保護 者にどのような変化があったのか紹介し、その要因について考察する。あわせて、この活動が小児科医の診療 に与えた影響についても考察する。また、この活動の実現に際して直面した課題を整理し、その対応策を共有 する。

【1-2】絵カードを用いた発達障害の児への服薬支援
*松本 康弘1、木下 博子2、金原 洋治3
1. ワタナベ薬局上宮永店、2. ほじん薬局片島店、3. かねはら小児科

 発達障害、特に自閉症スペクトラムの児は視覚優位のため、話し言葉という情報を取り込むことが苦手 で、表情やニュアンスの読み取りに課題がある。話し言葉よりも文字や写真などの視覚的な情報の方が取り込 みやすい傾向にあるため、自閉症の児に指導する場合は絵カードや写真を用いて「構造化」することで何をす るかを分かりやすくすることができる。 このことを踏まえて、第29回日本外来小児科学会年次集会のワーク ショップ(WS)で、服薬支援のための絵カードを作成した。第32回日本外来小児科学会年次集会WSでは作成 した絵カードを用いて医療現場で発達障害の児を含めた児の服薬支援を行い、有用性を検証した。今回の発表 ではWSで作成した絵カードを紹介するとともに、WSで提示された症例を報告する。

【1-3】 便秘への運動療育の可能性。医療との連携を通じて
*植西 祐樹1,2、久保田 恵巳2
1. (株)ピースプラント、2. くぼたこどもクリニック

 発達障害児は、社会性のつまずきと同時に不器用であること、落ち着きのないこと等の身体 的発達の課題が 指摘されている。作業療法士は、身体的アプローチの1つとして感覚の視点 からアセスメントし、治療を 行ってきた。入力される感覚を脳がうまく整理整頓できないと、 日常生活に支障がでる。今回、便秘で悩 み、且つ運動発達に課題のある児を、感覚の視点か ら仮説立て、運動療育という手段を用いることで改善に至 るケースがあったので報告する。

【1-4】発達障害児の慢性機能性便秘症への運動療育アプローチの報告
*久保田 恵巳1、植西 祐樹1,2
1. くぼたこどもクリニック、2. 株式会社ピースプラント

 発達障害児に便秘症の合併率が高いことは多く報告されている。その関係性は研究されているが、はっきり した原因の特定にはまだ至っていない。当院では便秘外来を開設しており、また、心理士による発達相談や発 達検査にも対応している。慢性機能性便秘症児の中で一部、通常の薬物治療に反応しにくいケースを認めてお り、それらの児は、発達面の課題を抱えている場合が多く、発達性協調運動障害(DCD)と考えられるケース もある。薬物で便の性状の改善は認めるが、排便回数の改善までは至らない児がそれにあたる。そのような児 に対して、連携する療育施設に運動療育を依頼し、症状が改善したケースを認めている。排便行為自体が協調 運動であり、筋の収縮や弛緩を複雑に組み合わせて行われるが、DCD児は、この排便の協調運動が苦手なこと が想像される。今回我々は、通常薬物治療のみでは治療に難渋し、かつDCDを合併する便秘症児に対して、運 動療育が有効である可能性について報告したい。

【1-5】地域小児科で行う心理相談の意義
*橋本 友紀1、横田 俊一郎1
1. 横田小児科医院

 発達障害や虐待、不登校、いじめのニュースが日々報じられている。横田小児科「発達と育児の相談室」で は、臨床心理士がこどもに関する心理相談を行ってきた。こどもがより健康な社会生活を送るために、地域小 児科で行う心理相談の意義について活動を振り返り考察する。  対象は2014年4月から2023年3月に心理相談を利用した1~17歳の233名(女子80名、男子153名)。これ らについて初診時の主訴を年齢集団ごとに比較を行った。結果、乳幼児期は言葉・発達の遅れが多かった。学 齢期は、学習の遅れ、多動などの行動問題が多かった。不登校は学童期以降一貫して高い割合を占めた。乳幼 児期の発達の問題が、年齢が上がるにつれて所属集団・社会への不適応へと拡大していくことが推察された。  したがって、まず発達早期に専門的に介入し、こどもを中心として家族や周囲の関係者などと信頼関係を構 築し、地域の諸機関と連携し、社会的不適応を予防することが、地域小児科の心理相談の意義であると考え た。

【1-6】オンライン医療相談から自治体に連携した47ケースの検討
*白井 沙良子1、橋本 直也1、田中 俊之1
1. 株式会社 Kids Public

 【目的】「オンライン医療相談から要支援家庭を自治体に連携したケース」を、後方視的に検討する。  【方法】2019年11月1日~2023年4月1日に、チャットなどで小児科医・産婦人科医・助産師が相談に応じ る株式会社Kids Publicのオンライン医療相談「産婦人科・小児科オンライン」に寄せられた相談を解析対象と した。自治体への連携は、児童虐待の防止等に関する法律などをもとに、複数の医療者で検討の上、実施し た。  【結果】自治体へ連携したのは、計33,374名中、47名(妊婦は妊娠5週~30週、子どもは生後 10日~3歳)。連携理由の最多は保護者のメンタルヘルス不調であった。  【考察】オンライン医療相談からの連携があるまで、自治体側で把握されていなかったケースもみられた。  【結語】オンライン医療相談は、要支援家庭を、自治体での支援に繋げられる一つの重要なツールとなりう る可能性がある。