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抄録のご紹介ページ(一般演題)

一般演題6・抄録/臨床(アレルギー・その他)


【6-1】小児アレルギー外来における皮膚テスト (skin prick testing) の活用 第二 報
*高尾 亜衣1、*中村 順子1、*舟木 里佳1、*徳田 玲子1
1. 徳田ファミリークリニック 小児・アレルギー科

 【目的】 小児アレルギー外来における皮膚テスト (SPT) の活用を紹介  【方法】 2022年の一年間に実施したSPT320 例を生活管理指導表 (アレルギー 疾患用) 提出期 (1~3月) と、 それ以外の平常期(4~12月) を比較検討した。  【結果】 提出期 170例の平均年齢は5歳1ヶ月であり、 平常期 150 例の3歳 0 ヶ月を大きく上回った。 提出 期では寛解出来ていない小中学生の受診が多く、 平常期では初診の乳児が30%近くと目立った。 提出期は鶏 卵抗原陽性率 45.5%、 乳抗原陽性率 22.8%、 小麦抗原陽性率 30.0%であったが、 平常期でも概ね同じ 陽性 率であった。【考察】 SPT は簡便であり、 全年齢に適している。 アレルギー疑いの初診乳幼 児の現状把握、 年長児の除去解除の判断、 特殊な抗原などでも施行している。 不必要な採血を減らす目的としても、即時に 判定できその場で結果を見ながら 診断できるSPT は有効的に活用出来ている。

【6-2】ステロイドを使わない乳児湿疹・アトピー治療 ~モクタールという古い薬を使ってみませんか?~
*浅田 和豊1
1. 医療法人四摂法 あさだ医院

 昔は日本でも、湿疹や皮膚炎などにタール剤軟膏が使用されていた。タール剤は独特の臭いがする、衣服や 布団につくと色が落ちないなどの理由で、現在はほとんど使用されていない。名古屋市にある当院で は、2019年末からモクタールを使用しており、その使用経験を報告する。調査期間は2020年1月から2023年 4月。対象者は、乳児湿疹やアトピーのステロイド治療に疑問をもつご家族の患者さん158名(男性72名、女 性86名)で、年齢は0~52歳(中央値4.0歳)、住所は愛知県内144名(名古屋市内75名、市外69名)、県外 14名。治療効果の判定は、ご家族や患者さんの申告と、診察医の視診でおこなった。結果は、改善79名、や や改善15名、無効5名、不明(1回のみの受診のため)59名であった。モクタールは乳児湿疹や小児のアト ピーに一定の効果を認めた。当院の受診患者は年々、増加している。モクタールを処方している医療機関は全 国でもごくわずかであるため、もう少し増えてくれるとよい。

【6-3】思春期におけるアトピー性皮膚炎のセルフケア支援と課題
*有川 邦子1
1. 聖隷佐倉市民病院

 【目的】  思春期の子供を対象にしたアトピー性皮膚炎のセルフケア支援と課題について考え、外来における教育支援 につなげる。  【症例】  11歳男児、アトピー性皮膚炎と診断。掻痒感で夜間眠れず、受診時見た目を気にして常に長袖、身体を搔く 仕草あり。発語はほとんどなし。  【経過】  他院受診繰り返すが、正しくケアされておらず母の介入も拒否。まずは子どもと話すことから始め、関係性 を確立。指導すべき課題から短期目標を提示。本人が正しいケアを知り得たところで12歳となりJAK阻害剤開 始。治療効果あり、徐々に症状改善。  【考察】  思春期を考慮し、徐々に関係性を確立ながら指導。内服薬併用による症状改善もあり「やればよくなる」と いう治療への信頼性が得られたことは大きい。思春期においてこのような成功体験が、セルフケア向上のみな らずアドヒアランス維持につながったと思われる。  【結語】  セルフケアの課題を明らかにすることは治療の目標に個別性を持たせ、治療の効果を最大限に発揮させ る。思春期におけるアトピー性皮膚炎の治療では、思春期という時期と個別性を配慮した関わりによるセルフ ケア確立とアドヒアランス維持に向けた外来支援が求められる。

【6-4】当院でのスギ舌下免疫療法の検討
*伊藤 孝子1、鈴木 俊輔1、近藤 真弓1、橋本 政樹1
1. 医療法人社団まなと会 はしもと小児科

 当院では、2015年10月から舌下免疫療法を開始し、現在までにスギ423例、ダニ272例行っている。今 回、スギ舌下免疫療法を行った症例にアンケートを行い、検討したので報告する。  対象は、5歳から14歳(中央値:8歳9か月)までの127例(男児78例 女児49例)。治療期間は9か月から 5年(平均1年11か月)。  服薬状況は、90%以上が「毎日できた」または「週1回忘れた」であった。治療効果は、鼻汁・鼻閉が90% 以上、目のかゆみは65%の症例で改善した。治療による生活の変化は「薬の使用量が減った」「入眠できるよ うになった」「風邪をひきにくくなった」などQOLの改善を認めた。副反応は、口腔内の症状が多かった が、半数以上に症状は出現しなかった。治療に伴う負担は、「毎日の内服」「通院」「治療後の生活制限」な どが多かったが、治療前にしっかりと説明することで、治療の継続が可能となっている。また、効果を実感で きると、治療の継続につながるため、症状が良くなっていることを共感し、励ましていくことも大切だと考え た。

【6-5】母乳栄養児のビタミンD欠乏と日光浴
*鶴田 恵子1、棚橋 順子1、村瀬 貴代子1、谷 美樹1、土屋 千枝1、川井 進1
1. 川井小児科クリニック

 目的  ビタミンD(VD)は、カルシウムの吸収を助ける骨の健康に欠かせない栄養素である。日光を浴びることで VDは体内で作られるが近年は日光を避ける方が増えている。  母乳栄養児は母乳中のVD含有量がミルクに比べ少ないため多くはVDが欠乏する。母乳栄養児のVDの測定 とともに保護者の日光浴に対する考えについて検討した。  方法  乳児240名のVD25OHDを測定しVD不足と診断した乳児にVDサプリメント投与、補完食指導と日光浴指導 し4週後にVD25OHD値を再検査した。  結果  母乳栄養児240名中VD正常は35%、欠乏65%。日光浴は必要と思うかに対して95%が必要と回答。しない 方が良いは2名、必要でないが9名あった。必要と思う理由で、骨の成長(くる病予防)と回答したのは 40%。日照時間の短い冬季に来院した児の25OHD値は低い傾向にあった。4週後、サプリメント服用した乳児 の93%は正常、サプリメント服用していない乳児でも日光浴と補完食で53%が正常となった。  結語  母乳栄養児には補完食指導とともに、日光浴指導が必要であると考えられた。

【6-6】乳幼児健診および小児科で不器用と言われ続けていた局所性ジストニアの 10歳男児例
*神田 恵津子1
1. キッコーマン総合病院

 10歳男児。幼少時より左手のみ不器用であるとの主訴にて初診された。自分の思い通りに左手指が自由に動 かず、一例として左手のピースサインを作る際には右手での補助が必要であった。乳幼児健診や小児科で相談 しても、不器用としか言われなかったとのことであった。診察では、左手指の緊張亢進によるこわばり、患者 の意志とは異なる方向に動く左手指の異常姿勢が認められた。局所性ジストニアと診断し、内服による治療を 開始したところ、症状の改善傾向が認められた。

【6-7】選択性緘黙を抱える児に対するプレイセラピーの事例
*芦谷 将徳1,2、*大屋 和之2
1. 福岡大学、2. おおやこどもクリニック

 【目的】不安症に位置づけられる選択性緘黙の主な治療法として、プレイセラピー、刺激フェイディン グ、エクスポージャー等が挙げられる。日本において、プレイセラピーが数多く行われているが(飯村 ら、2023)、プレイセラピー中の遊具とその臨床的意義については、検討が少ない。そこで、小児科診療所 において、選択性緘黙を抱える児に対して、心理職がプレイセラピーを行った事例の中で、遊具を介した遊び がいかにして発話によるコミュニケーションに繋がったのかを検討することを目的とする。【事例】年中、女 児。特定の状況で発声できないことを主訴に受診。家族以外の人とのコミュニケーションの場づくりを目的と してプレイセラピーを導入した。【考察】発話による自己表現に対する不安が高まりやすい選択性緘黙児に とって、発話の以外の表現方法が保証される場や遊具を提供することで、結果的に発話への不安の高まりが低 減すると考えられる。