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抄録のご紹介ページ(一般演題)

一般演題8・抄録/ポスター発表


【8-1】初期臨床研修制度における一般外来診療研修の指導方法の探索的調査
*川畑 秀伸1、村上 学2
1. 帯広畜産大学 保健管理センター、2. 北海道大学 医学研究院 医学教育・国際交流推進センター

 目的 医師臨床研修制度において、2020年より導入された「一般外来診療研修」に関する指導方法、課題 点、指導医に必要な能力について明らかにする。  方法 2022と2023年に合目的に対象者13名(平均年齢51歳;男性;研修医2名、指導医11名:小児科 4名、内科3名など)を選定し半構造化個別インタビューにて、一般外来診療研修の方法、課題点、指導能力な どを調べた。各々約60分を要したインタビューを録音し、データを活字化して内容分析を行った。  結果 指導方法:指導医の見学や実際の診療。課題点:研修医の診察が観察できない、研修医の意欲。指導能 力:教育的態度と教育技法(成人教育理論や指導技法にて意欲を引き出し、指導内容を絞り込む)、臨床能力 (医学的根拠と経験からなる能力)、人間性(対人関係構築力、職業意識と医療観の認識)。  結語 外来診療研修の目標達成と課題克服のために、指導医は、教育、臨床、態度の視点から自らの能力をと らえ指導にあたっていた。

【8-2】琉球政府発行の母子手帳
*今西 康次1
1. じねんこどもクリニック

 戦後沖縄県は米軍統治下にあったが、1961年に琉球政府は日本国内で利用されているのとほぼ同じ母子 手帳を導入している。1972年に日本に返還されるまでの間、琉球政府発行の母子手帳は5種類あり、今回 SNSで呼びかけたところ全種類の母子手帳を集めることができたので紹介する。母子手帳の最初のページは日 本の児童憲章で始まっている。

【8-3】当院における過去5年間の食物経口負荷試験の解析
*春日 亜紀1、浄法寺 彩子1、武田 捺南絵1、尾崎 瑞希1、中島 京美1、松本 一郎1
1. 医療法人松本小児科医院

 【はじめに】当院の外来における過去5年間の食物経口負荷試験の解析を報告する。 【対象・方法】対象は 2018年1月から2022年3月で実施した1061例(522人)。 【結果】①最多年齢は1歳、次いで0歳だった。② 負荷食品は鶏卵64.1%、乳19.9%、小麦11.0%の順に多く、全体の約9割を占めた。③負荷陽性率は 14.2%、その内11.9%が帰宅後に陽性となった。また、アドレナリン使用率は全体の0.5%であった。④負荷 陽性者の誘発症状の割合は、皮膚症状(74.8%)が最も多く、他の症状では鶏卵で消化器症状、乳で咽頭症 状、小麦で呼吸器症状がそれぞれ多い傾向にあった。 【考察】当院での負荷陽性率は他院の報告と比べて概ね 低く、安全に実施できたと考える。食品別では誘発症状の出現傾向が異なることから、各食品で症状を注意深 く観察することで早期発見・対応につながるのではないかと考えた。また帰宅後に陽性となった要因の一つ に、最終摂取後の観察時間が短かったことが考えられ、今後検討していく必要がある。 【おわりに】今回の解 析で、当院における食物経口負荷試験の傾向の把握や方法を見直す機会となった。

【8-4】外国にルーツを持つ子どもの診療所受診に関する実態調査
*藤田 優一1、工藤 大祐1、福井 美苗1、小笠原 史士1、脇本 景子1、加藤 丈太郎1、藤井 達矢1、大坪 明1
1. 武庫川女子大学

 目的:外国にルーツを持つ子どもの小児科の受診状況や対応方法について明らかにする。  方法:関西の小児科を標榜する診療所970施設に勤務する医師、看護師、事務職員にweb上で回答するアン ケート調査を実施した。  結果:医師54名、看護師8名、事務職9名の計72名より回答があった。外国にルーツを持つ子どもの1か月間 の延べ受診件数は、「1~9件」が39名(54.2%)、ついで「10~19件」12名(16.7%)であった。健康保 険制度や医療システムで困ったことは「全くない」が35名(48.6%)で最も多かった。文化や宗教、習慣の違 いで困ったことは「全くない」が29名(40.3%)で最も多かった。言語について困ったことは、「ない」が 20名(27.8%)、ついで「ある」が17名(23.6%)であった。外国語への対応方法は、「やさしい日本 語」53名(73.6%)、「ジェスチャー」47名(65.3%)、「日本語が話せる知人が同伴」46名(63.9%)で あった。  考察・結論:言語で困っている状況はみられたが、医療制度、文化・宗教では困っていることが比較的少な い状況がみられた。

【8-5】予防接種を安全に確実に行う ~ごちゃごちゃを滅茶苦茶にしない工夫~
*佐治 佑奈1、後藤 友理恵1、岡本 まゆ美1、藤本 伸治1
1. 医療法人双優会つつじが丘こどもクリニック

 日本小児科学会は予防接種の意義を「病原体あるいは細菌が出す毒素の、病原性や毒性を弱めたり、なくし たりしたもので、あらかじめ体の中に免疫の記憶を残し、病気にかからずに済むようにするもの」と位置付け ている。わが国でも多種類のワクチンを出生早期から接種するよう計画されている。  しかし、接種する年齢、種類、接種間隔、変更される接種要綱など国の指針を遵守することと、「同時接種 がかわいそうなのですべて単独接種したい」「2本ずつ接種したい」といった保護者の希望も叶えなくてはな らず、接種計画はパズルのようになっている。  パズルのようなごちゃごちゃしたワクチン計画を、滅茶苦茶にしないための工夫として、  ・適切な接種スケジュールの提案と管理  ・安全に実施するための役割  など、当院独自のルールを作って実施している。   今回は、大切なワクチン接種を、安全・確実に、そして滅茶苦茶にせず実施する工夫について紹介する。

【8-6】坐剤の分割使用時の投与量と作成した指導文書の有効性の検証
*池田 貴司1、米谷 亜矢子1、守谷 縁1、大喜多 美智代1、浦上 勇也2、山本 和幸3
1. サンシャインスター薬局、2. スター薬局 大野原店、3. 株式会社スター薬局

 【目的】小児科領域において、坐剤は広く使用される剤形であるが、規格が限られているため分割して使用 する事が多い。しかし、分割された坐剤の重量が本来の指示量に一致しているか疑問を抱き調査を行った。ま た、分割の指導をサポートするための指導文書を作成し、その有効性を検証した。  【方法】当薬局で実施しているこどもおくすり教室に参加した保護者を対象に、通常行っている方法で坐剤 を分割してもらい、指示量と分割された坐剤の重量に差が無いか検証した。その後、作成した指導文書を使用 して再度坐剤の分割を行い、指示量と分割された坐剤の重量の差を検証した。また、同時にアンケート調査を 実施した。  【結果・考察】通常方法での分割では、ほとんどの例において指示量を大きく上回っていたが、指導文書を 使用する事で指示された投与量により近い値となった。また、アンケート調査の結果からは、坐剤を分割する 事に不安を抱く保護者が多かったが、指導文書の使用により不安が解消される事が確認された。

【8-7】地域のネウボラを目指す取り組み 〜切れ目ない子育て支援に向けて〜
*則本 真理1、苅谷 誠子1、外山 絵美1
1. 社会医療法人 同仁会 みみはら高砂クリニック

 当クリニックは、年間約700件ほどの分娩を担当する耳原総合病院の門前診療所である。地域特性などか ら、さまざまな育児への困難を抱える患者が多く、育児支援のニーズは高いと感じている。コロナ禍以前から 私たちは、地域版ネウボラの役割を果たすべく、切れ目のない育児支援を目指して、行政や総合病院の MSW、産婦人科と頻繁に連携を行いながら乳児健診や育児相談、またワクチン接種時の個別相談、TEL相談な どのフォローを行ってきた。
  コロナ禍では育児相談の個別化、感染対策にも配慮した形式への変更を余儀なくされたが、5類感染症に 移行しそれもまた再考するべき時を迎えている。これまでと同様に、時勢の変化に呼応しつつ奮闘する当クリ ニックの現状を報告すると共に、子育てにおいて様々なリスクや問題の早期発見・早期支援をする事はもちろ ん、ネウボラの役割を考慮し地域の子ども達と親の健康の維持・増進をこころがけていきたいため、現在の問 題や今後の課題、展望などを明らかにしたいと考えている。